任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ将来の任意後見人を選び、自分が将来判断能力が不十分な状態になった時に備えて、自分に代わってしてほしい判断業務を託する内容の 契約(「任意後見契約」)を交わしておく制度です。
対 象 者 |
判断能力に問題がなく、締結をしようとしている任意後見契約等の内容が理解でき、当該任意後見契約等を締結する意思がある者。 |
手 続 き |
判断能力が減退した際の任意後見人(任意後見受任者)と代理権等の契約内容を決定し、公証役場において公正証書で契約。 |
契約発効の |
本人の判断能力が減退してきた場合、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求し、選任された時から、任意後見受任者が任意後見人となり、代理権に基づいた事務を開始する。 |
【 成年後見制度利用開始時点の事理弁識(判断)能力と制度の関係 】
判断能力の状況 (事理弁識) |
十分な場合 |
任意後見 |
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不十分な場合 |
法定後見 |
不十分 |
補 助 |
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著しく不十分 |
保 佐 |
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欠く常況 |
後 見 |
☆ 成年後見制度の「自己決定権の尊重」の理念により、本人の意思で契約をした任意後見契約が、法定後見に優先する。
しかし、「家庭裁判所は、本人の利益のために特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができる」と規定されている (任意後見契約に関する法律第10条)
◎ 任意後見契約について
任意後見契約とは、本人が、精神上の障がい(認知症・知的障がい・精神障がい等)により判断能力が不十分な状況になったときに、自己の生活、身上監護および財産の管理に関する事務の全部または一部の代理権を、本人が選んだ任意後見人に付与する委任契約のことです。
任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によって締結し、公正証書作成後は、公証人が法務局への登記を嘱託します。
任意後見契約は、任意後見監督人が家庭裁判所により選任されたときから契約の効力が生じます。
・任意後見契約の公正証書作成費用は |
□ 公正証書作成の基本手数料 11,000円 |
◎ 任意後見契約の登記後は、
任意後見契約の登記後は、本人が精神上の障がいにより、判断能力が不十分な状況になった場合、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者は、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の申し立てをします。
任意後見監督人は、任意後見人から事務処理状況の報告を受け、これに基づいて任意後見人の事務処理状況を家庭裁判所に報告し、その指示を受けて任意後見人を監督します。このようにして家庭裁判所がその選任した任意後見監督人を通じて任意後見人の事務処理を監督することにより、任意後見人の代理権の濫用を防止することができる仕組みになっています。
また、公正証書により任意後見契約を結ぶと、誰が誰にどのような代理権を与えたかという契約内容が、公証人の嘱託により登記されます。
そして、現在この登記「後見登記」は東京法務局がその事務を担当しており、登記が完了すると、任意後見受任者、または任意後見人は、
任意後見受任者の氏名や代理権の範囲などを記載した『登記事項証明書』の交付を受けることができます。
任意後見人は、任意後見契約の効力が生じると、この書面により本人のために一定の代理権を持っていることを証明することができますから、円滑に本人のために代理人としての事務処理を行うことができることになります。
また、その任意後見人の相手方として一定の取引などをする人々も任意後見人からこの登記事項証明書の呈示を受けることにより、その任意後見人が本人の正当な代理人であることを確認することができるので、安心して取引に応ずることができます。
なお、銀行・郵便局等の金融機関への任意後見開始の届出にあってはこの証明書が必要になってきます。
◎ 任意後見契約の種類
任意後見契約の種類には、「即効型」、「移行型」、「将来型」の三種類があります。
また、別途、本人の生活状況や健康状態を見守る「見守り契約」というものもあります。
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すでに軽度の認知症・知的障がい・精神障がい等の状態にある人による契約であり、契約を結んだすぐ後に任意後見監督人の専任の申し立てを行うものです。契約時点は、意思能力を有している必要があります。 |
移 行 型 |
民法上の「委任契約」と「任意後見契約」をともに結んでおき、本人の判断能力があるうちは代理人に財産管理をしてもらい、本人の判断能力が低下してきた時点で任意後見監督人を選任して、任意後見をスタートするというものです。 |
将 来 型 |
本人の判断能力が十分な段階で、任意後見契約を結んでおき、将来、本人の判断能力が不十分になった段階で任意後見監督人を選任して、任意後見をスタートさせるものです。 |
見守り契約 |
将来型の任意後見契約を締結した場合、受任者が、任意後見契約をスタートさせる時期を本人と相談しながら決め、それまでの間、定期的な連絡や訪問により、本人の生活状況や健康状態を把握して見守ることを目的とした契約です。 |
◎ 任意後見契約の解除と変更
・任意後見契約を途中でやめるときは・・・
家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前ならば、いつでもどちらからでも契約を解除することができます。この場合、公証人の認証のある内容証明郵便を相手方に送って通告することが必要です。
また、双方が合意の上、この契約を解除することもできますが、この場合にも公正証書か、公証人の認証を受けた書面によることが必要です。
次に、任意後見監督人が選任された後には、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。なお、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができます。
・任意後見契約の内容変更について
(1) 代理権に関する内容の変更
① 代理権に関する内容のうち、代理権を行うべき事務の範囲を拡張する場合
⇒ 新たに任意後見契約を作成する
または、既存の任意後見契約を維持して、拡張した代理権のみを付与する任意後見契約の公正証書を作成する。
② 代理権を行うべき事務の範囲を縮減する場合
⇒ 契約の一部解除が許されないので、全部解除した上で、新規の任意後見契約の公正証書を作成する。
③ 複数の任意後見受任者と代理権の共同行使を単独行使(各自代理)による任意後見契約へ変更する場合
⇒ 同様、全部解除の上、新規の任意後見契約の公正証書を作成する。
(2) 代理権に関する内容以外の事項の変更
例えば、報酬の額等を変更する場合は、私署証書では認められないので、公正証書により変更契約をする。
(3) 任意後見人の変更
既存の契約を解除し、新たな契約を締結する。
■ 任意後見契約締結までの流れ
(1)本人の意向確認 |
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① 意後見受任者を誰にするのか ・ 親族か第三者(職業後見人等)か ・ 単独か複数か ② 契約の目的(必要とする代理権)は何か ③ 類型は何にするか ④ 死後事務委任契約は必要か ⑤ 親族の方は知っているか(子供) |
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(2)契約能力の確認 |
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① 判断能力の確認 ② 署名できるか ③ 印鑑登録の有無 ④ 費用支払い能力の確認 |
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(3)必要書類の収集等 |
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委任者・・・戸籍謄本、住民票、印鑑証明 受任者・・・住民票、印鑑証明書 重要事項説明書の交付 |
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(4)契約書案の作成 |
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(5)公証人との打合せ |
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① 公正証書内容の打合せ ② 契約日、契約場所の確認 ③ 公証人費用の確認
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(6)契約当日の確認事項 |
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① 実印の確認 印鑑登録証明書どおりの印鑑であるか確認。本人が誤解している場合もあります。 ② 登記印紙・郵便切手準備担当者 登記印紙と収入印紙の区別は、一般の方には分からない場合が多いので、当日困らないよに立替をし、事前に準備をしていくことが望ましいです。 |