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4.成年後見人は具体的にどのようなことをするの?

   

本人の財産の状況などを明らかにして、成年後見人選任後1ヶ月以内に、家庭裁判所財産目録を提出します。
本人の意向を尊重し、本人にふさわしい暮らし方や、支援の仕方を考えて財産管理や介護、入院などの契約について、今後の計画と収支予定を立てます
日々の生活での収入や、支出を記録し、本人の財産を管理します。
必要に応じて、介護サービスの利用契約や、施設への入所契約などを本人に代わって行います
一定の時期に、家庭裁判所の求めに応じて、成年後見人として行ったことを報告し、助言や、指導を受けます。

 

成年後見制度の職務とならないもの

 

身上監護のため、純粋な生活支援行為(食事・排泄・入浴等の支援)は行わない
医的侵襲を伴う医療行為に関する同意権は無い

   

成年後見人は、本人の身上監護を職務とすることから、医療契約(診察契約)を本人に代わって締結する権限を有しますが、その契約した医療の中で行われる、身体に傷をつけたり、生命の危険を伴う個々の行為は医的侵襲行為と呼ばれ、医師等が行う医療行為ではあっても本人の同意なく行うという違法性が阻却されず、刑法上は傷害罪(刑法204条)が成立し、民法上も不法行為(民法709条)を構成することがあると解されています。

したがって、医師等は本人の同意を得ることなく医療行為を行うことはためらわざるを得ないのです。その結果、同意をする人がいなければ、本人は必要な医療行為を受けることができません。にも、関わらず成年後見人にはこの医的侵襲を伴う医療行為に対する同意権までは無いのです。

 その理由として、医療行為に対する同意は法律行為ではなく、一身専属権であると考えられることなどがあげられます。

※医療契約とは ・・・
 「本人のために適切な医療を行ってください。そうしたらそれに対して報酬を支払います。」といことを約束する、医療の全体に対する契約のこと。

※一身専属権  ・・・
 本人以外にはできない性質を帯びた権利のこと(運転免許証のような)

 

③ 居所指定権

 未成年の子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所(継続して住む所)を定めなければならないとされ、また未成年後見人は、居所の指定に関しては、親権を行う者と同一の権利義務を有するものとされています(民法85条.821条)
このように、未成年後見人には、本人である未成年者の居所を指定する権限(居所指定権)が与えられています。

 しかし、成年後見人には、本人に対する居所指定権はありません

 

成年者である本人は、判断能力を欠く常況にあるとはいえ、未成年者のように人として未成熟なわけではありませんので、自己決定の尊重の理念を重視して、住む所は本人の自由意志に委ねるべきとの考え方によるものです。
したがって、成年後見人はいくら本人のためになると考えても、病院や、施設への入所を強制することは出来ません。可能な限り本人の意思を引き出し、本人の生活スタイルや、好みに適った居所を選定することが、本人の最善の利益につながることになるでしょう。

 

婚姻の合意などの身分行為

判断能力を欠く常況にある成年被後見人(本人)は、財産上の法律的行為を自ら単独で行うことは出来ませんが、婚姻のような身分上の法律行為(身分行為)は、成年後見人の同意なしに、自ら単独で有効に行うことができます(民法738条)
なお、婚姻は、戸籍上の定めるところにより届け出ることによってその効力を生ずるとされています(民法739条)が、この届出も成年後見人ではなく、本人自身が行うこととされています(戸籍法3条)。離婚の合意も同様に、本人自身が単独で行うことができます(民法764条)。

 

一身専属権 

権利を持つ特定のその人しか行使することができない権利、または、特定のその人しか持つことのできない権利のこと一身専属権といいます。
婚姻や、離婚、遺言や子の認知など、また、医療行為への同意権などが一身専属権とされます。
このような、一身専属権に属する行為は、一般に成年後見人の職務ではありません。なお、婚姻や、離婚の訴訟においては、成年後見人が本人のために訴訟を行うことができるとされています(人事訴訟法14条参照)が、これは訴訟手続の安定を図るための配慮がなされているためです。

 

身元引受け・身元保証

本人が特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や、老人保健施設(介護老人保健施設)、有料老人ホームなどの施設への入所を希望する場合、あるいは病院に入院する場合などには、身元引受人・身元保証人と  呼ばれる人の就任を求められるのが通例です。
しかしこうした施設への入所や、病院への入院に際して求められる身元引受人・身元保証人については、法的な意味合いが明確でないことが多々あります。
成年後見人としては、こうした保証債務等まで負担することを内容とする身元引受人や、身元保証人を就任することを求められた場合には、その立場上、就任することはできないことを説明して断らざるを得ないものといえるでしょう。
最近では、例外的なケースを除き、本人に成年後見にが選任されていることにより、身元引受人や身元保証人なしで、入所・入院が許可されるケースが増えているようです。

 

※参考文献「成年後見教室●実務実践編」社団法人成年後見センターリーガルサポート 編著