そもそも何のために成年後見制度が必要なのか?
がわかれば、成年後見制度がわかりやすいと思います。
簡単に言えば、
成年後見制度があるのは、判断能力がない方には助けが必要だから
です。
認知症の人や、障がいのある人の中には、1人で預貯金の出し入れや、スーパーマーケットでの日常の買い物(食料品や、生活用品)が出来ない人もいます。
また、知的障がいのある人などのなかにも、パソコンを使って絵を描くことは好きでも、自分でパソコンを買ったりすることは出来ないという人もいます。
それでは、助けてくれる家族がいれば必要ないのでは?と思われるかもしれませんが、そうでもありません。
法律上、判断能力(意思能力)のない方はご自分では有効に契約などの法律行為ができません。
理屈は次のとおりです。
本人がする契約などの法律行為に本人が拘束されるのは、その契約などが自らの意思に基づくからです。
しかし、そもそも自分の行為が理解できない方が契約などの法律行為をしても、それは自らの意思に基づ
くとはいえませんね。
意思に基づかない以上、本人を縛ることはできない。だから、その契約などの法律行為が無効になるのです。
ただ、そうなると、認知症などにより日常の判断能力がない方は、財産管理や施設との契約締結などを法的に有効にすることができません。
困ってしまいます。
確かに、それらの行為を家族が本人に代わって行うケースも多いです。問題が起きなければそれでいいでしょう。
しかし、家族が本人に代わって行うそれらの行為は法的には問題があります。
判断の能力がない本人から頼まれたといっても、「頼む」(「代理権を与える」)ためにも本人の判断能力が必要です。
したがって、判断能力のない本人の家族が本人の「代理」で行った行為は基本的には有効にはなりません。
いざ相続が発生した際、「あなたが勝手にやったことだから無効だ!」と異を唱える相続人が出てきて、トラブルになるケースは決して少なくありません。
また、家族がいつまでも本人の面倒を見続けられるわけでもありません。
その場合には、代わって面倒を見てもらう人が必要です。
さらに、判断能力がなくなると、不必要な高価な品をたくさん買ってしまい、財産を無駄に散逸させてしまいかねません。
そこで、
財産管理や身上監護事務(施設への入所契約など)を、
本人に代わり、有効に行う人物が必要になるのです。
そのような人々の支援を行う為、
「成年後見制度」が設けられ、成年後見人・保佐人・補助人が選任されることになっています。
なお、現有能力の程度の違いによって、補助・保佐・後見と支援の内容が多少異なってきます。
将来の相続財産争いを防ぐために利用されるケースも多いですし,
判断能力の乏しい高齢者を狙った悪質な次々販売などへの対処にもつながります。
◆ 判断能力の識別フローチャート(PDF)
成年後見人・保佐人・補助人のどの支援が必要?
※ 成年後見人が選任されるケース
1 |
判断能力が不十分な人の預貯金の払出手続き |
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知的障がいで施設に入所しているDさんの施設費を支払うために、 姉のCさんがDさん名義の銀行口座から払出請求をしたところ、 「ご本人以外の方が払出しを受けるには委任状(実印つき)が必要です」といわれました。 また、「Dさんの預貯金の払出しを受けるには『成年後見制度』を利用していただくことになります」と銀行員に言われました。
⇒ Dさん名義の普通預金の払出しを受けるには、成年後見人の選任が必要です。 |
2 |
判断能力が不十分な人を含めて遺産分割協議をする必要があるとき |
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Bさんは、亡き夫Aさんの残した遺産(自宅・預金等)についてBさんとCさんとDさんで遺産分割をするために法律専門家に相談しました。 ところが、「Dさんは『知的障がい』があり、判断能力が不十分であるので、このままでは遺産分割協議が行えない」とアドバイスを受けました。 どうしたら良いのでしょうか。
⇒ Dさんに代わってBさんとCさんと遺産分割協議をするためには、 成年後見人の選任が必要です。 |
3 |
障がい者施設との入所契約等をするとき |
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Bさん宅へDさんが入所している施設から連絡があり、 障害者の福祉サービスの利用が「措置」から「契約」へと変わったため、介護・支援の内容について、新たに施設とDさんとの入所契約を結ぶ必要がでできました。 Dさんの家族である、母親のBさんも姉のCさんも、法律的にはDさんに代わって入所契約をすることはできません。
⇒ Dさんに代わって入所契約を結ぶためには、成年後見人の選任が必要です。 |
4 |
高齢者が悪質商法に騙されたときや、騙されないようにするため |
5 |
認知症の親の生活費等にあてはめるために土地を処分する必要があるとき |
6 |
判断能力が不十分な人のために被害回復請求をしなければならないとき |
7 |
知的障がいのある子の将来が心配なとき(親なきあとの心配) 精神障がいがある子の将来が心配なとき(親なきあとの心配) |
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Dさんの姉であるCさんが仕事の関係で海外へ派遣されることになりました。 母であるBさんはもし、自分が認知症になったり死亡したりした場合、知的障がいのあるDさんは1人残されることになります。それを考えると心配です。
⇒ Dさんの成年後見人が一度選任されると、Dさんが生きている限り成年後見人がいなくなることはありません。そのため、BさんかCさんが今のうちにDさんのために、成年後見開始の申立てをしておくのがいいでしょう。
この場合、Bさんが1人でDさんの成年後見人になるか、はじめから信頼できる 第三者にDさんの成年後見人になってもらう方法があります。 Bさんまたは、成年後見人をお願いした第三者に万が一のことがあつたときは、 Cさんが後任者の選任申立てをするか、家庭裁判所が職権で後任者の選任をすることと なります。
また、Bさんと信頼できる第三者とが複数で、Dさんの成年後見人となる方法もあ ります。このとき、Bさんもしくは第三者のどちらかに万が一のことがあったときでも、Dさんの後見が中断することはありません。 |
成年後見制度のメリット
・ 判断能力が低下した人の財産管理と身上監護をすることができる。
「銀行取引の代理行為」本人が銀行に行かなくても、必要な金銭の取引を代理人が行う
事ができます。
・ 法定後見制度と任意後見制度の利用の内容、成年後見人の権限や任意後見契約の内容
などをコンピューターシステムにより法務局で登記して登記事項証明書が発行されるため、
情報を適正に開示することができ、成年後見人等の地位が公的に証明される。
・ 成年後見人等には取消権があるので本人が詐欺に遭っても契約を取消す事ができる
その一方で日常生活に関する行為には同意がいらないので、本人の意思を尊重すること
ができます。
成年後見制度のデメリット
・ 会社の取締役や、弁護士・医師等の一定の資格に就くことができない(資格制限)。
※ 補助は除く
・ 申立てから実際に後見が開始するまでの手続きに時間がかかる。
・ 印鑑登録も抹消されます。