認知症の徘徊について考える③
【中日新聞・東京新聞WEB2016.3.4】より。
公的な救済制度が必要 どう守る事故被害者
「国で在宅介護を推進しているのだから、今回のような場合の救済がないのはおかしい」(五十代女性)
「何らかの共済制度をつくって、被害を救っていくべきでは」(四十代女性)
認知症鉄道事故訴訟の最高裁判決を前に、情報サイト「認知症ONLINE」を運営するウェルクス(東京都)が認知症の人の介護経験がある読者百人に行ったアンケートで寄せられた声だ。
「今後、同様の事故で損害が発生した場合どう賠償するのが妥当か」の問いには
「国、または公的機関による救済制度の創設」との回答が八割に上った(複数選択)=グラフ参照。
家族の監督が困難な場合は賠償責任を認めないとした今回の判決。
「認知症の人と家族の会」代表理事の高見国生(くにお)さん(72)は「これで勇躍、認知症の人の介護に当たることができる」と、記者会見で介護家族の喜びを代弁したが、被害回復の方策は残されたまま。
高見さんは「事故の被害者がいつもJR東海のような大企業とは限らない」とし、やはり「全額公費での救済制度」を求めた。
具体的にはどんな仕組みが考えられるか。
介護保険制度草創期の厚生労働省老健局長で、大阪大教授を務めた堤修三さん(67)は、地域ぐるみで認知症の人を支えるとの観点に立ち「介護保険の枠組みの中で、市町村が被害者に一定の見舞金を支給する事業を行えるようにするべきだ」と話す。
堤さんによると、見舞金支給方式を提唱するのは「皆が納めた保険料で第三者に対する損害賠償の肩代わりをさせることには無理がある」ため。
労災保険や自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)といった公的な保険は、事業主や自動車の運転者の賠償責任を前提としている。
認知症の人の行為による損害の救済をこれに倣うと、家族の賠償責任を一律に前提とすることになりかねず、最高裁判決とも矛盾。
「認知症の人は、家族に賠償リスクを負わせる危険な存在との偏見を助長する」と指摘する。
保険でない給付制度は、認知症の人と家族の会なども提言する。
今回の訴訟を通じて、そもそも認知症の人たちを事故から守る社会の在り方について
「基本法を制定して示すべきだ」との論議も、高齢者支援団体などの間で巻き起こった。
そうした声を受け「認知症者等総合支援基本法」の私案を作成したのが、介護・福祉問題に詳しい外岡(そとおか)潤弁護士(35)。第一条で「認知症者等の人権が十分に保障され、住み慣れた地域社会で平穏な生活を送ることができる環境を整備する」と目的をうたい、国と自治体の責務を掲げる。
国土交通省が、認知症の人が絡む交通事故の統計調査を行った上で、線路や踏切に容易に立ち入れない装置や人員配置、駅員への認知症研修の徹底を鉄道会社に指導するよう求める。
自治体には、認知症の人が行方不明になった際に迅速に発見、保護するネットワークの確立と互いの情報共有を促す。
「二〇五〇年までの時限立法とし、関係機関には期限内の積極的な取り組みを求めたい」(外岡弁護士)という。
全国に医療、介護施設を展開する事業者の立場で、基本法整備を訴えてきた湖山(こやま)医療福祉グループの湖山泰成代表(60)は「今回の判決は、新しい認知症社会をつくる出発点。
その指針となる憲法のような法律を超党派の議員立法で実現させるよう、国民運動を盛り上げるときだ」と。
認知症者をもつ家族にとって、普段の生活をおくるだけでも心労が絶えません、少しでも平穏に暮らしていけるよう早急に国をあげて環境を作っていって欲しいものです。
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